モーグル ワールド/ ”モーグルをもっと楽しく”が合い言葉

里谷多英・優勝
里谷多英選手・決勝
写真:優勝した里谷多英選手
写真:決勝での里谷多英選手の力強い滑り

里谷多英選手が優勝!「うまい里谷」が帰ってきた!

フリースタイル スキー 全日本選手権 モーグル 2008 北海道大会が、さっぽろばんけいスキー場のモーグルコースで行われた。

晴天に恵まれた今日は朝から気温も上がり、暑さを感じさせるほどの陽気となった。

女子ではW杯モーグルの年間総合チャンピオン、上村愛子選手が疲労のため欠場し、前日のデュアルで優勝した村田愛里咲選手も昨日の予選で痛めた左手を安静にするようにとコーチに言われたことで欠場することとなった。

そんな中、ひと際存在感を持つ選手がいた。
長野オリンピック金メダル・ソルトレークシティオリンピック銅メダルの里谷多英選手だ。

「私は今は追いかける立場」という里谷選手は、初めてモーグルの大会に出た小学校5年生以来となる、ばんけいスキー場での大会に強い思い入れがあったようだ。
地元でもある北海道での大会には、「恩師やお世話になった方々がたくさん応援に来てくれるので、絶対に恥ずかしい滑りだけはしたくない」と心に誓っていた。

その決意は、大会前の公式練習にも現れていた。
コースインスペクションや公式練習には、誰よりも早く登場し、コースの確認のため果敢に滑り込んでいた。

そして予選では一番最後に登場、ひと際大きな声援が飛ぶ中で、里谷選手は会心の滑りを魅せ、24.51点という高得点で2位に2点以上引き離しての1位で決勝進出。
決勝も当然(予選順位下位の選手から滑走)一番最後に登場すると、地元札幌のファンたちは「待ってました」とばかりに大きな声援を送った。
里谷選手は、予選以上に速いスピードと確実なエアを決め、ゴールまで一気に滑り降りた。
そして、25.42点という文句なしの高得点で12年ぶりとなる8回目の全日本選手権 優勝を決めた。

試合後、里谷選手は「優勝できたことは本当にうれしい、頑張ったかいがありました」と語り、表彰台の一番高い所(優勝)に立つのは'99年のW杯猪苗代大会以来となるが、「やっぱり気持ちいいですね」と強かった頃を思い出したようにも見えた。
来シーズンに向けての手応えについては、「今日はまだ欠場(上村選手、村田選手)した選手もいたし、今回の結果をどう評価してもらえるかもわからないので、世界で戦えるという自信につながるものではないが、まずはしっかりと遠征(W杯)を廻ること、そして世界選手権の代表にも選ばれるように頑張りたい」と語った。

里谷選手のスキーのうまさは天性のもので、かつては「世界一のターン」と言われるほどだった。
今日の滑りを表現するなら「うまい」の一言に限るだろう。
里谷選手のスキー技術が他の選手と大きく違う点は、スキーのトップ(先端)からテール(後端)までが、きれいにコブの中で雪をなめるように滑る技術を持っていること。
これは、スピードが出ても常にコントロールができるポジション(スキーに対しての体の位置)にいるからだ。

「31才という年齢で体力面なども、これからまだ伸びて行くということも難しいので、努力と根性でなんとか乗り切って行きたい」と語る里谷選手は、バンクーバーでオリンピックでの3個目のメダルを取るまでは若い選手たちにも負けたくないとさえ感じられるものだった。

「オフシーズンに入るが、今年は休んでいる場合ではない」とすでに来シーズンに向けてしっかりとした体作りを考えているようだ。

上村愛子選手、伊藤みき選手、里谷多英選手、さらには村田愛里咲選手と日本モーグル女子チームの熱い時代がやってきた。

これからの「全日本モーグル チーム」から目が離せない。

(2008.03.22.20:00)

里谷多英選手・優勝
写真:多くのファンが見守る中、決勝で大きなエア(バックフリップ)を見せた
里谷多英選手・公式練習
写真:朝の公式練習で真剣な表情でコースを眺める里谷多英選手