モーグル ワールド/ ”モーグルをもっと楽しく”が合い言葉


2008 FIS ワールドカップ モーグル フランス・ティーニュ大会・現地レポート by M.J

<上村と伊藤の成長>

ヤンネ・ラハテラコーチの下、2シーズン目となった今シーズンの開幕戦で注目したのはやはり伊藤みきと上村愛子の成長である。
女子は、里谷多英が昔からスピードに強く、他の日本の女子選手はとにかくスピードに弱かった。
上村も長い時間をかけてスピードには強くなってきたが、エアーのルール変更などでなかなか世界トップクラスのスピードレベルには成長しきれないでいた。
トリノオリンピックでもはやりスピードで世界に負けたといえた。
しかし、今日の上村の滑りには今までに無い速さがあった。
予選は26.08で滑りダントツのトップタイムで予選2位の選手のタイムに1秒以上差をつけた。
決勝ではさらに早く滑り25秒台前半でこちらもラップタイムとなった。

フランス ティーニュ モーグルコース
上村愛子・伊藤みき
全日本ナショナルチーム
WCフランス ティーニュ大会モーグルコース
(photo:MJ)
全日本ナショナルチームメンバー
(photo:MJ)
伊藤みき選手(左)と上村愛子選手(右)
(photo:MJ)
2007−2008シーズンFISフリースタイル・ワールドカップは、フランスのティーニュでモーグル種目の開幕戦が行われました。
天候は快晴で気温−6℃、無風という絶好のコンディションの中で大会が行われました。

日本からは、女子に上村愛子、伊藤みき、伊藤あずさの3名が、男子は上野修、遠藤尚、遠藤夏樹、大友徹也、尾崎快、桑原竜司、西伸幸の7名が出場しました。

コースは、第1エアーまでが緩斜面で、エアーのランディング後徐々に斜度が急になっていくになりました。
コブは人工コブで、多少硬いもののそれほど難しくはなく、大きなミスをする選手が少なかったです。
女子予選の上村は、第1エアーでコーク720を決め、第2エアーではバックフリップを決め、両方の着地に小さなミスがあったものの、予選を2位(22.91)で通過。
伊藤みきは、エアーとターンに大きなミスが無く10位(20.85)で予選通過をしました。
伊藤あずさは、スピードが遅く18位(19.66)で予選落ちとなった。
予選1位は、昨シーズンのワールドカップランキング3位のマルガリータ・マーブラー(オーストリア)でした。
昨シーズンのランキング1位、2位のジェニファー・ハイル(カナダ)とシャノン・バーク(アメリカ)は不出場。

男子予選の日本勢では、遠藤夏樹が7位(23.20)で決勝に進出。ターン、エアーノーミスで自身初の決勝進出。
西は、ターン点が伸びず16位。
上野は、第2エアーの着地でミスをして27位(21.80)。
尾崎は、ターンにバラつきがあり大きなミスは無いものの28位(21.74)で予選落ち。
大友は、中盤まではノーミスもミドル途中からバランスを崩した事が減点につながり36位(19.88)。
桑原は、ミドルでのターンでミスが多く44位(19.46)。
遠藤尚は、初のW杯出場からの緊張で滑りが硬くミスが多くなり、46位(18.76)。
予選1位は、世界王者のピエール・アレクサンドル・ルソー(カナダ)。ハイスピードでも安定したターンをみせて予選唯一の14点台のターン点を出しての予選1位通過。

決勝は、男女とも転倒やコースアウトをする選手がいないハイレベルな闘いとなりました。
女子の伊藤は、攻撃性のある力強いターンと大きなバックフリップが決まり、自己最高位の4位(23.15)となった。
上村は、予選からダントツのスピードをみせて予選と同様に第2エアーのランディングで後傾になり小さなミスがあったものの、スピード点が延びて接線の決勝で2位(23.51)表彰台をゲットした。
女子の優勝は、予選1位のマルガリータ・マーブラー(24.24)が正確なターンで他を圧倒して優勝しました。

男子決勝も見ごたえのあるハイレベルな争いになりました。
W杯初の決勝進出の遠藤夏樹は、ノーミスの自分自身の最高の滑りをして10位(23.54)でした。世界に通用するレベルである事が証明できた事は彼にとって大きな収穫だったといえるでしょう。
優勝は、女子と同様に予選1位でターン点で差をつけたP−A・ルソー(25.04)。
オリンピックチャンピオンのデール・ベッグ・スミス(オーストラリア)は、第1エアーのバックフリップのクロスの時に板が引っかかりバランスを崩したのが響いて6位でした。

2008 FIS ワールドカップ モーグル・フランス ティーニュ・リザルト>

女子表彰台
男子表彰台
<女子表彰台>
左から2位上村愛子・1位マルガリータ マーブラー
3位クリスティ リチャーズ
(photo:MJ)
<男子表彰台>
左から2位タピオ ルースァ・1位P-A ルソー
3位アレキサンダー ビロドウ
(photo:MJ)
<総評>

世界選手権、オリンピックの無い谷間のシーズンという事で、各国新しい選手が多く出場した大会となった。
女子はジェニファー・ハイルやシャノン・バークらの不参加もあり、予選はW杯としては少しレベルが低く感じられた。
男子は新顔の選手もレベルが高く拮抗した予選となった。
しかし、エアー難度点の変更、スピード計算の変更、さらにコース(エアーのランディングの長さ)の制限など大きくルールが変わって注目された開幕戦で、
やはり男子予選でエアー難度点の変更に伴うクレーム(ジャッジミス)などもあり、やはりスムーズな進行とはいかなかった。
また、エアーの難度が細分化されたことにより、全体的にエアーの点数が低くなるようになったと感じました。

驚くのは、本人はあまりとばしている意識は無いという事。板を横に振らないようにしていくことで結果的にスピードが速くなったのである。
そのスピードのためか分からないが予選決勝共に第2エアーのバックフリップは少しオーバー気味でのランディングとなりミスをしてしまった。
本人は、エアーに現在課題をおいているのでこの高速ターンとエアーがかみ合えば、今シーズンかなりいい成績が出るのではないかと期待している。
そして、伊藤みきも同じ事が言える。
もともとターン、エアーの才能はあったがスピードが遅くエアーの大きさやターン点も伸びないことが多かった。
しかし、今日の滑りはスピードもあり、そのスピードのまま第2エアーのバックフリップに入ることでバックフリップが大きくなり、エアー点とスピード点が伸びたことで自身最高位の4位入賞となったといえる。
ラハテラコーチの下でスピードに強くなったこの2人は、今後のシーズンの活躍を予感させるレースとなったと言える。

<現地レポート:M.J>